【農業未経験からの転職】独立の方法や30代、40代の農業転職で失敗しない方法を解説!

【農業未経験からの転職】独立の方法や30代、40代の農業転職で失敗しない方法を解説!

未経験から農業に転職を考えている方でこんな悩みはありませんか?

・未経験から農業はどうやったらできるのか

業の分野、種類について知りたい

・給料はどれくらいもらえるのか

・独立までの流れや実情を知りたい

農業は個人事業主が多いので本当の内情が見えづらいのが現実です。

農業世界に足を踏み入れる前に確認すべきことはいくつもあります。

そこで、今回は農業に転職する前に大切なことや、農業での独立までのロードマップを詳細に紹介しております。

私は農家に生まれ30年農家で育ち、現在は農業関係の会社に10年以上勤めています。

日々の営業の中で農家さんの生の声や、そこに勤める従業員さんに聞いたお話を交えながら農家の実態を徹底解説していきます。

農業には耕種農業と畜産農業がある

農業は大きく分けて耕種農業と畜産農業の2種類です。

あまり耳馴染みがないですが耕種農業は”耕”と、ある通り畑や田んぼ、果樹なども含まれます

また、私たち人間の食べるものから飼料用、薬品作物など様々なものです。

畜産業は牛、豚、鶏の他にも愛眼用や保護目的の動物などの飼育もです。

農業は人手不足で引く手あまた

農業の現場では常に人手不足です。

それによって規模拡大に踏み出せなかったり生産の質や効率が落ちてしまっている現場もあります。

農家さんと話していると従業員を探していて、「お前もどうだ。」と、お誘いただいたこともありました。

それくらい人手が不足していて常に募集をしているところもあるようです。

農林水産省の調査によると以下のようなデータもあります。

平成27年平成28年平成29年平成30年平成31年令和2年令和3年
基幹的農業従事者
(単位:万人)
175.5158.6150.7145.1140.4136.3130.2
新規雇用就農者
(単位:千人)
7.710.410.79.89.910.111.6
平均年齢(歳)67.166.866.666.666.867.867.9
農林業センサス農業構造動態調査(農林水産省統計部)
※「基幹的農業従事者」とは、ふだん仕事として主に自営農業に従事している者をいう。
※「新規雇用就農者」とは、調査期日前1年間に新たに法人等に常雇い(年間7か月以上)として雇用されることにより、農業に従事することとなった者。

このように基幹的農業従事者(農家)は減ってはいるものの、農業の新規雇用従事者(新たに農業に就職、転職する人)は大きく増えることはなくまだまだ足りていないのが現状です。

農業に転職するにあたり就職先が見つからなくて困ることは少ないでしょう。

農業のメリット、デメリット

ここでは従業員として働いたとき、独立したときそれぞれのメリット、デメリットを正直にご紹介します。

農業のメリット

農業では特別な資格が必要なわけではないので、30代、40代の未経験者の方でも転職は比較的容易です。

・特別な資格がなくても始められる。

・精神的なストレスは少ない。

・会社によっては仕事で使う資格や免許を取らせてくれる。

・独立して自由な経営ができる。

・独立後は頑張った分だけ収入の見返りがある。

実際に私の取引先でも30代、40代の方で他業種から転職してきている方は何人も見てきました。

農業のデメリット

農業は正直メリット以上にデメリットが大きいと思うのが私個人の意見です。

・従業員の収入は上がりづらい。

・農家の収入は不安定。災害で未収入も...

・畜産分野は一年中ほとんど休みなし。

・同業者や関係者との関わりが多い。

・必然的に田舎に住むことになる。

農業は自然や生き物相手の仕事なので自分では操作できないところも必ずあります。

人によってはそれが農業の面白いところですが、感じ方はそれぞれなので大きなデメリットでもあると思います。

確実な安定を求める方や自然とうまく付き合っていく覚悟がない方は農業は難しいです。

新規就農者の給料は低い?

個人、法人問わず従業員の給料が低い農家が多いのは事実です。

実際に自分の取引先の従業員の方にもよくそう言った話を聞きます。

・基本給これだけだよ。

・作業量と割に合わない。

・10年働いてもこれだけしか昇給してない。

農業は不安定な分、なかなか従業員の方の給料を上げづらいのも事実です。

法人化されている農家さんでも評価基準などを定めていないところもまだまだ多いです。

ただ、ある農家さんでは賞与でしっかりと評価付けしており多いと50万円以上は出していると役員の方に聞いたこともあります。

また、別の農家さんでは和牛繁殖を一頭与えて、増やすもよし売るもよしとされていたところもありました。

上記の条件が良し悪しは別ですが、農家さんによっては工夫して給与体系を造られていました。

下記の表は、農林水産省で農業区分別に個人、法人の雇人費の平均を出したものです。

個人の細かい給与を示したものではないですが、各農業区分で従業員に使われているお金の規模感がわかると思いますので参考にされてください。

水田作(稲作単一)畑作露地野菜施設野菜果樹露地花き施設花き酪農繁殖肥育養豚採卵養鶏ブロイラー養鶏
個人経営体(雇人費)50千円415千円547千円1,141千円528千円666千円1,226千円1,635千円336千円553千円1,650千円2,648千円1,170千円
法人経営体(雇人費)8,549千円13,170千円24,552千円23,808千円11,884千円19,123千円26,126千円35,233千円18,718千円24,851千円56,206千円72,146千円23,671千円
雇人費:従業員(常雇、臨時雇)及び農業に従事した有給役員に対する給料、賞与、福利厚生費をいう。ただし、個人経営における農業専従者に対する給与は含まない。
農林水産省『農業経営統計調査令和3年 農業経営体の経営収支 P18~P45』

https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/einou/attach/pdf/index-1.pdf

引用:農林水産省『農業経営統計調査令和3年 農業経営体の経営収支』

このように、畜産業の法人が特に雇人費に経費がかかっています。

これは、やはり人数が必要な作業や現場が多いなど耕種農業よりも人手がたくさんいることからきており、金額が高くなっているように思います。

これを、給料の高い安いの判断基準にするのは難しいですがこのような数字を見ながら今後の農業分野を選ぶ上で、判断材料にしていただくのもいいかと思います。

少し農家の家族目線の話

農家の子供からみた両親の姿

家族はいつでも家にいるので寂しい思いはしたことはなく、祖父母と両親は比較的仲が良かったです。 

両親、祖父母ともに乳牛を飼育し畑作を営んでいる家に生まれ育った私は、毎日朝早くから夜まで働く家族の姿を見ていました。

畑だけならまだしも乳牛もともなると休みもなく、とても働きものだなと思っていたことを覚えています。

農家の生活で嫌だったこと

・まとまった休みがないので遠出ができない。

・手伝いに狩りだされる。

・友達に牛くさいと言われる。

・住む場所はド田舎。

特に農家の家族として嫌だったのが休みがないことと毎日の手伝いでした。

私の実家は畜産農家だったのでほぼ休みはありません。

たまに早めに朝の仕事を終わらせて買い物に連れて行ってくれたりはしましたが時間の制約があり、しっかりと楽しめてはいなかったです。

泊りの旅行なんてまずありえません。

また、日々仕事を頼まれることがあり忙しい時期だと夜の8時までなどざらでした。

子供の私にはとても退屈で苦痛な時間だった記憶が強く残っています。

農家で良かったこと

・動物と触れ合える、扱いに馴れる。

・自然の中でのびのび遊べる。

・手伝いの中での成長がある。

・それなりに裕福な暮らしをさせてもらえた。

・家族と過ごす時間が長い。

小さいころから牛に囲まれて生活してきたのであまり怖いと思ったこともなく扱いも一般の人よりは手慣れています。

また、田舎なのでそこらへんに当たり前にいろんな動物がいます。その動物との出会いも今となっては貴重な体験をしていたんだなと思います。

子供の生活や成長には良いことが多いのも農家の特徴であり良いところです。

毎日家族と過ごす時間も必然的に多くなってくるので成長を見届けるには良い環境です。

就農してから家庭を持ちたい人。すでに家族がいる人は家族が就農後にどのように思い、どのような生活になるのかを相談したりリアルに想像して選択するのがいいと思います。

農業をするうえで家族の協力があるかないかでは大きく経営やその後の人生に影響するので家族の意見をしっかり聞くなどして農業への転職を考えましょう。

転職前の準備

1.自分の興味のある分野、目的

まずは農業に就職、転職したいと思ったらどの分野がいいのか、その分野を選んだ目的、理由を考えましょう。

分野をきめないと転職先を探すこともできません。

また、農業は肉体的にしんどいので目的、理由がはっきりしなければ後々辛くなってしまって後悔することになります。

2.調べる

分野が決まったらその分野について調べてみましょう。

今だとYouTubeでも農家さんが作業の動画をあげていたりどんなことをしているのか一日の流や作業の内容が分かると思います。

この時大切なのが一年を通しての作業の内容を知ることです。どの分野も一日だけ作業内容がわかったところで何もわかりません。

季節によって作業内容が変わり理想と違うことが結構あるのでしっかり調べましょう。

3.現場を見る、体験する

次は実際に見て、体験してみることです。

これは少しハードルが高いように感じますが調べてみると各自治体や農協、または個人農家さんで農業体験を開催しています。気軽に参加でき、イベント的に行うところもあるので楽しみながら参加できます。

そこで担当のかたや農家さんとふれあえることもあると思うので実際の生の声を聞くと良いです。

4.適正を知る

見て体験したあとは改めて自分の決めていた分野の目的や理由と照らし合わせて考えてみましょう。

これをしないといざ働き出しても理想と現実とのギャップが生まれ後悔につながることもあると思います。

自分は本当にこの分野で農業に従事していけるのか、目的が果たせるのか、辛くてもやっていけるのかなど見つめ直してみましょう。理想だけではできないのが農業です。

転職サイト紹介

農業に特化した転職サイトはいくつかあります。また、案外見落としがちですがよく聞く大手の転職サイトにも農業系の求人もあります。それぞれ特徴がありますのでご紹介します。

転職サイト特徴①特徴②特徴③エージェント有無タイトル
あぐりナビ業界最大求人数非公開求人あり細かい検索条件で検索可能詳細を見る
農業ジョブ15年以上の歴史
安心感
コンテンツに特徴あり
(人気の求人特集など)
詳細を見る
求人ボックス農業以外の求人もある一般職寄りハローワーク求人を除く選択が可能詳細を見る
マイナビ農林資産ジョブアスインターンシップあり専用イベント・セミナーありスカウト機能調査中詳細を見る
FarmAgent完全クローズド求人サイトの閲覧なしメールにて求人情報あり詳細を見る

転職サイトの情報でわかることは少ない

これは農家さんに出入りしている自分だからわかることですが、転職サイトに載っている情報だけでは本当にわかることが少ないということです。

そんなこと当たり前だろと思われるかもしれませんが、農業はより転職サイトと現場とのギャップがあるように思います。

作業内容は書ききれないほどあり、季節ごとに代わる日々の仕事の過酷さも転職サイトでは掲載しきれないほどです。

転職エージェントを使った方がより見えてくる

農業で転職エージェントを使うというのはまだまだ少数派のようです。しかし、上記でも伝えたようにサイト情報だけではなかなかわからないことも多いのでエージェントに希望をしっかり伝えて選定していくのが望ましいです。

その上で現場を見てみたりお話を聞けるのがベスト。

できれば話を聞く相手は今現場で働いている従業員さんの話を聞けるといいでしょう。

雇用主目線ではなく従業員目線のリアルな話を聞きましょう。

転職先の候補に確認すべきこと

転職先の候補がいくつか決まったら確認すべきことを押さえておきましょう。

1.就業時間

2.季節ごとの作業内容、環境(細かいところまで)

3.給与体系(昇給、賞与)

4.休日

これらを聞いておかないとほぼ間違いなく後悔します。特に2と3に関してはしっかり確認しておきましょう。

農業新聞の記事
日本農業新聞 2022年12月19日記事

農業新聞の記事でもあるように離職の最多理由は”ミスマッチ”にあるようです。

記事の中で農業から離職した方のは47%が「仕事内容が合わない。」とあり、とても重要な部分を占めていることがわかります。

これを防ぐためにも、先ほどの2,3の確認を行ったり、転職サイトのエージェントにしっかり相談してみることもおススメです。

独立までのロードマップ

ここでは大まかな新規参入までの流れを解説します。

また確認事項などもご紹介していきます。

1.独立をする前の確認、準備、

就農をして数年がたち、独立を目的にされていた方はいつ独立しようかと考えるとおもいます。ですが、以下のような心配が出てきます。

・就農して何年で独立できるのか

・どの程度のスキルをもって独立してよいのか

・独立するために何が必要なのか

多くの独立目標の就農者が考えることだと思うのでデータを交えながら確認しましょう。

1‐1.転職して1年以上が独立への区切り

就農者の独立のタイミングは以下の“青年就農給付金事業”の条件にあるように。

(ア)就農に向けて必要な技術等を習得できる研修機関等であると都道府県(第 8の3に定める全国型教育機関にあっては事業実施主体)が認めた研修機関 等で研修を受けること。

(イ)研修期間が概ね1年かつ概ね年間1,200時間以上であり、研修期間を通して就農に必要な技術や知識を研修すること。

 青年就農給付金事業 – 農林水産省

https://tudukeru-blog.com/wp-content/uploads/青年就農給付金事業.pdf

青年就農給付金事業 – 農林水産省

ただ、全員が1年の研修を終えすぐに独立しているかというとそうでもないようです。

以下のデータでは年齢別に新規で独立した方の“就農までの年数(新規参入者)”があり、1年から1年半がどの年代も最も多く3年から4年が次いで多くなっています。(pdfファイルの21ページ目)

https://www.be-farmer.jp/uploads/statistics/lDlUsiQ6BUnDGT2jp33D202003171504.pdf

新規就農者の就農実態に関する調査結果 平成28年

新規参入は分野によって初期投資などのハードルが違うので比較的生産のサイクルが早い野菜などは1年~1年半の研修期間。畜産や果樹など生産サイクルに時間がかかる分野は長めの研修が必要になってきます。

1‐2.知識の確認

独立する上で知識、技術の習得は大前提です。

知識もなく新しく事業をしていくのは無謀といえるでしょう。

野菜も家畜も見当違いの生産方法では良いものは作れません。

ただ、自分がどこまでの知己を身に着けていられるのか、判断が難しいです。

そこで“日本農業技術検定”というものがあります。

https://jpsk.jp/examinations/nca.html

日本農業技術検定

この検定は農業高校レベルから大学レベルと高度な知識を必要とする試験です。

自分のレベルに合わせて腕試しをしてみてもいいし、知識の確認にはもってこいの検定でしょう。

1‐3.農場の土地選定、取得

農場の土地選定はどのような形態で始めるのかで候補地もかわってきます。

・全く新たな土地で一から始める。

・空き農地で始める。

・後継者を募集している農家に就農する。

このような始め方があります。それぞれ一長一短あるのでよく考えて選定しましょう。

また、農地は農地法もしくは農業経営基盤強化促進法に基づき取得、賃貸借しなければなりません。

各市町村役場の農業委員会などに相談しましょう。

下記リンクに、農地取得について詳しく解説されています。

https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/wakariyasu.html

農林水産省

1‐4.資金調達

よほど資金力がない限り農業は融資していただく事がほとんどです。

ほとんどの生産物で初期投資が大きくなってしまうのが農業です。

例えばビニールハウス一棟を建てるのに10a当たり500万円以上かかるというデータもあります。

https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/pdf/jyousei_5.pdf

また肉用牛を飼育する牛舎を建てる場合は270頭規模で9000万円近くかかるようです。

近年建設資材の価格も上がってきているので年々新規参入のハードルは上がっているでしょう。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/nourin/20190517/190517nourin01.pdf

農林水産省

これらの価格は条件などによっても変わりますが、当然これ以外にも必要なものはあるので、もっとかかることを考えると融資を受けることは必須です。

そのためにはしっかりとした事業計画や事前準備が必要です。

また融資だけではなく交付金や優遇制度などもあるのでそちらも活用しましょう。

制度、交付金の一覧はこちらです。

https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/nintei_syunou.html

農林水産省 認定新規就農者制度について

優遇制度、交付は都道府県(普及指導センター)、市町村又は日本政策金融公庫等にご相談下さい。

1‐5.開業届

農業で独立するにあたり開業届を提出しましょう。

農業も立派な事業ですので今後のためにもしっかりと届け出をすることは大切です。

開業届を提出すると

・青色申告ができる。(青色申告承認申請書を提出しなければならない。)

・赤字を繰り越せる

・事業用の口座を開設できる。

この手続きは所定の税務署で行うことが可能ですので申請書を受け取り提出しましょう。

2. 独立の準備が整った後は…

独立の準備が整ったならいよいよ農業のスタートです。と言いたいところですが、まずは冷静に経営方針を考えましょう。

私がお会いした新規就農者の方だと前職場や研修先の方針に影響されている方が多いです。当然そのやり方に慣れていたり、知らなかったりするので仕方ないでしょう。

しかし、まったく同じ土地と条件、環境で始めるわけではないので同じ経営をしてつまずいてしまった話をよく耳にします。

例えばこんな話。

・畜産農家さんで研修先と就農先の環境の違いが大きいのに同じ飼育方法で失敗した。

・畜舎に資金を使いすぎてしまった。ここまでの施設は必要なかった。

・北海道の環境、設備に影響され必要以上の機械を導入してしまった。

憧れや理想を追い求めすぎると現実とのギャップが生まれ失敗します。

冷静に自分の置かれた環境、条件と向き合い真似できるところは真似して、あとは自分の経営環境に見合った方法を考えましょう。

これに時間を割くことは非常に大切です。

まとめ

今回は未経験からの農業の転職から独立までに関してをまとめました。

  • 農業は人手不足。
  • まだまだブラックな会社もある。
  • 求人は多く転職サイトも豊富。
  • 独立までの道のりは厳しいが夢とやりがいはある。

飛び込むのはとても覚悟のいる業界ですが魅力もたくさんある仕事なので今回の記事が参考なればと思います。